棚田米作り 一年の流れ

和歌山・熊野三山で有名な那智山の西側にある色川・小阪地区の棚田。

山間部にあるため朝晩の寒暖差が大きく、昼間の日差しをたっぷりと受けた稲がお米の粒の中にしっかりと糖分を蓄えるため、もちもちして甘みがある美味しいお米ができます。

過疎高齢化が進み、休耕田が増える中、地元の有志たちが「棚田を守ろう会」を立ち上げ、力を合わせて復田と保全に取り組んでいます。

「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」にも選定された色川の棚田。そのお米作りの一年の流れをご紹介します。

田んぼの準備(3月~5月)

■鶏糞まき

自然な飼料で育てている色川地域の平飼い養鶏家より鶏糞を調達します。


■田起こし

鶏糞を入れた田んぼを耕運機で耕します。


■畔そり

畔(あぜ)の内側に生えている草を土とともに、鍬(くわ)で剃り取ります。


■入水

那智山から流れる山の水を田んぼに引き入れます。


■荒がき

田の水持ちがよくなるように、耕運機でこなしていきます。


■畔塗り

田んぼに貯める水が漏れないよう、鍬を使って剃りとった畔の内側に泥土を塗り付けて補強します。


■代かき

苗を植えやすくするため、田んぼの土をさらに細かくし、水田をかき混ぜ水平にします(代まぜ)。


苗代での苗作り(3月後半~田植え)

■稲の苗を育てるための苗代の準備

苗代用の田を、田起こし・畔そり・入水・荒がき・畔塗り・代かきと進めていきます。


■種まき

苗代に種籾をまきます。棚田を守ろう会では、かなり手間がかかるのですが一般的な育苗箱は使わず、直接苗代に種籾を播き水苗を育てます。


■育苗管理

適切な水の管理を行い、約40日かけて田植えに適した苗に育てていきます。


田植え・管理(5月~8月)

■苗取り

苗代の苗を1本ずつ手で引き抜いて束ね、田植えの準備をします。


■草刈り

田んぼの畔や石垣に生えている草を、刈り払い機を使い刈ります。棚田を守ろう会では参加者にすっきりした田の風景を見ていただきたく、各イベント前には必ず行っています。


棚田を守ろう会では、田植え機を使わず、昔ながらの手植えで田植えをしています。 裸足や長靴で田んぼに入り、苗の束から3本程度を取って田に引いた線に沿って植えていきます。毎年、田植えイベントを開催し、地元住民だけでなく、大阪や名古屋、関東からも参加者が訪れます。


稲の生長を促し、また害虫の発生を抑えるため、田んぼの中に生えている草を手や中耕除草機で取り除きます。棚田を守ろう会では、除草剤や農薬を使わずまた化学肥料も入れずにお米を育てています。土と太陽と水、そして稲そのものがもつ本来の力で育てています。草取りをしっかり行うことで、土の栄養分が稲に十分に行き届き、美味しいお米になります。


稲刈り・乾燥・精米(9月~10月)

田植えより120日くらいを目安に稲刈りをします。棚田を守ろう会では、昔ながらに手作業で(鎌を使って)稲刈りを行います。
刈り取った稲を束ねて、杉の木を使った「なる」を横に立てかけ、そこに稲を掛け天日干しをします。この天日干しは、一般には稲架掛け(はさかけ)と呼ばれますが、当地方では「なる架け」と呼びます。稲刈り後の「なる架け」の景色は壮観です。


■天日干し(なる架け)

天候にもよりますが、1~2週間程度、日光と風に当てて乾燥させます。

お米の水分が多いとカビや虫がつくので、1年間保存するためにしっかり水分を抜きます。

また、お米を干している間に、稲わらの栄養が実に移るとも言われています(追熟)。


■脱穀・精米

まず籾を外し玄米にして、そこから糠分を取って白米にします。

また、「なる架け」に使った「なる」を片付けます。


■藁撒き

脱穀したあとの藁(わら)を小さく切って、田んぼにまんべんなく撒きます。藁は微生物が分解して肥料になります。


秋田起こし(11月)

■秋田起こし

脱穀した後の稲藁を短く切って田に播いてから、来年の為に年内に一度耕運機で田起こしをしておきます。


餅つき・しめ縄作り(11月)

■餅つき・しめ縄作り
《体験イベントあり》

色川の棚田で育てたもち米を使って、昔ながらの餅つきを行います。
また、棚田のもち米の稲わらで、無病息災や家内安全を願う「しめ縄」を作り、お正月の準備を行います。イベントでは、色川の文化と伝統を多くの人に知ってもらうために、「わらぞうり作り」も行います。



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